あんなふうになりたい。

だいぶ前ですが、奈良の談山神社へ紅葉を見に行ったときのこと。談山神社から石舞台へ峠を越えて歩くことにした。友達曰く「なだらかな道が続く」とのこと。
行ってみると、本気山道で両手を使って登ったり下ったりしないといけない道だった。「うそつき〜」と言いながら歩いていると、初老の夫婦がスタスタと歩いて後ろから来られた。向かう方向は同じらしいので、まぁ連れもって行きましょうと話をしながら歩いていた。ご夫婦は歩きなれている様子で、不慣れな私たちを始終気遣ってくれた。
奥さんの方は歩くのがめちゃくちゃ速い。何やら常にしゃべりながら、スキップするようにスタスタと歩いて行って、そのあとを旦那さんが一定のスピードで歩いていく感じ。私は奥さんの速さに着いていけないので、旦那さんの方と並んで歩いていたら、奥さんとの距離は開く一方。
「ほら見て、またあんなん見てはるやろ。」
おだやかな口調で旦那さんが言う。
奥さんは草や石像やらに足を止めて、なんやかんや好きなことをしゃべっている。そうこうしているうちに旦那さんが追いつく。2、3言葉を交わし、奥さんはまたパタパタと先を歩く。
「お父さんな、もう80才やねんけどな、毎日10km歩いてはるねん」
初老と思っていた夫婦はもっとご高齢だったのだ。戦争を余裕で経験され、「お父さんが戦争から帰ってくるのを待っていたから子供産むのが遅くなったわ」とか、「私ら早足やろ?若いときデートのときもこんなんやってんで」とか。
石舞台に到着し、「ではこれで。お元気で」と分かれた。(そのあとすぐ道に迷った)
共に歩くというのは素敵なことだと思った。あんなふうになりたい。